本書は、旧「支持力入門」の改訂版である。旧「支持力入門」は、平成2年(1990)年に刊行され、幸いにも多くの方に読んでいただいた。それから28年が経過し、土質力学、基礎工学の分野も大きく発展した。その中で次の3点は重要であろう。
(1)コンピュータの急速な発展と共に地盤材料のモデル化と数値解析手法の発展および計算プログラムの汎用化
(2)基礎形式・施工方法及び載荷試験方法の多様化
(3)国際整合性を背景とした基礎の設計法の変化と設計基準類の改定
　このような技術の発展と社会環境の変化の認識のもとで、改訂作業を進めた。
上記(1)を踏まえて2章では慣用的な支持力解析手法とともに数理解析手法の基礎的理解を目指し、上記(2)を踏まえて3章では基礎形式・施工方法及び載荷試験方法に関する最新の知見を取り入れる努力をし、上記(3)を踏まえ4章では設計思想の変遷と性能設計に基づく基礎設計を記述すべく大幅な改訂を行った。
なお、改訂の必要がないと判断された部分は、旧「支持力入門」の記述をほぼそのままの形で残すこととした。
　改訂版も旧「支持力入門」同様、多くの方に読んでいただくことを期待している。

≪目 次≫

第1章　　　地球が支える構造物(支持力の概念)
　　1.1　　構造物の下には
　　　　　1.1.1　アポロの月面着陸
　　　　　1.1.2　橋の下には
　　　　　1.1.3　ビルの下には
　　　　　1.1.4　基礎の機能(荷重の伝達と支持)
　　　　　1.1.5　設計の背景
　　1.2　　支持機構を目で見ると
　　　　　1.2.1　浅い基礎
　　　　　1.2.2　深い基礎
　　　　　1.2.3　浅い基礎と深い基礎を組合せた基礎(パイルド・ラフト)
　　1.3　　解析の考え方
　　　　　1.3.1　壊れ方もいろいろ
　　　　　1.3.2　どんと壊れる長く浅い基礎,ぐずぐず壊れる深い基礎　
　　　　　1.3.3　数値解析によるアプローチ

第2章　　　基礎の挙動と極限支持力の予測
　　2.1　　はじめに
　　　　　2.1.1　構造物の弾塑性応答の特徴
　　　　　2.1.2　支持力理論に関わる既知の理論解とその背景
　　　　　2.1.3　浅い基礎と深い基礎
　　2.2　　トラスと力学
　　　　　2.2.1　トラスの方程式
　　　　　2.2.2　トラスの弾塑性挙動
　　　　　2.2.3　弾塑性応答をするトラスの数値実験
　　　　　2.2.4　極限解析法による終局限界荷重の評価
　　　　　2.2.5　繰返し挙動を受けるトラスの応答
　　　　　2.2.6　有限要素法とトラスの方程式の類似点
　　　　　2.2.7　トラスと力学:まとめ
　　2.3　　浅い基礎の支持力理論
　　　　　2.3.1　極限解析法と極限平衡法
　　　　　2.3.2　Terzaghi の支持力式とその背景
　　　　　2.3.3　2 次元支持力問題と 3 次元支持力問題
　　　　　2.3.4　組合せ荷重と支持力曲面の考え方
　　2.4　　深い基礎の支持力と空洞拡張理論
　　　　　2.4.1　Carter らの空洞拡張理論の概要
　　　　　2.4.2　弾塑性領域の変位速度解の導出過程
　　　　　2.4.3　変位速度解を利用した解析
　　　　　2.4.4　空洞拡張理論の解を利用した思考実験
　　　　　2.4.5　c, ϕ 材料への拡張
　　　　　2.4.6　ϕ = 0 材料への拡張
　　　　　2.4.7　軸対称問題の解(参考)
　　2.5　　まとめ

第3章　　　鉛直荷重を受ける基礎の沈下
　　3.1　　はじめに
　　　　　3.1.1　沈下から決まる構造物への影響
　　　　　3.1.2　沈下はどこまで許されるか
　　3.2　　基礎形式と沈下性状
　　　　　3.2.1　直接基礎
　　　　　3.2.2　杭基礎
　　　　　3.2.3　パイルド・ラフト基礎
　　3.3　　沈下をどのように予測するか
　　　　　3.3.1　地中の増加応力
　　　　　3.3.2　即時沈下
　　　　　3.3.3　圧密沈下
　　　　　3.3.4　地盤物性値をどう決めるか
　　3.4　　載荷試験を用いた評価
　　　　　3.4.1　単杭の荷重-沈下関係の予測の実態
　　　　　3.4.2　単杭の鉛直載荷試験方法
　　3.5　　実構造物基礎の沈下性状
　　　　　3.5.1　地盤沈下地域におけるフローティング基礎
　　　　　3.5.2　粘土地盤における摩擦杭基礎
　　　　　3.5.3　地盤改良を併用したパイルド・ラフト基礎
　　　　　3.5.4　大きな地震動をうけたパイルド・ラフト基礎

第4章　　　基礎の設計と性能照査
　　4.1　　はじめに
　　4.2　　基礎の設計思想・設計法の変遷
　　　　　4.2.1　設計基準類整備以前
　　　　　4.2.2　許容応力度設計法の確立
　　　　　4.2.3　限界状態設計法・部分係数設計法への移行
　　　　　4.2.4　性能設計概念の導入
　　4.3　　基礎の設計の基本的な流れ
　　4.4　　調査および構造計画
　　　　　4.4.1　調査に基づく地盤のモデル化
　　　　　4.4.2　基礎の構造計画
　　4.5　　基礎の性能照査
　　　　　4.5.1　鉛直支持力の照査
　　　　　4.5.2　常時の沈下量の照査
　　4.6　　設計基準類における工学的判断と設計上の留意点
　　　　　4.6.1　鉛直支持力に関して
　　　　　4.6.2　常時の沈下に関して
　　4.7　　おわりに
　　参考文献