まえがき
　現在,地盤工学会の用語に関する出版物は三つある。「土質工学標準用語集」
(平成2年3月)、「土質工学用語辞典」(昭和60年3月),「岩の工学用語解説集」
(昭和48年6月)であり、それぞれの書籍は基準部、事業部,調査部の所管となっ
ている。　　
　平成9年9月,基準部における「土質工学標準用語集」の見直しに合わせて,調
査部から:「岩の工学用語解説集」の見直しの依頼があり,「岩の工学用語解説集」
が基準部に移管されたのを受けて,同年10月、基準部会から地盤工学表記法検討
委員会および岩の試験・調査基準検討委員会に対して,両用語集の見直しと対応
方針の検討が依頼ざれた。岩の試験・調査基準検討委員会では、岩の選定用語の
確認,新規用語め選定を実施した。平成10年1月には,見直しの結果と今後の方
針が両委員会により答申された。
　その基本方針は,
1)両者を一体化して「地盤工学標準用語集」として出版する,
2)既存の土質工学用語シソーラス(案)の見直
し作業と改正結果に基づき標準用語を選定・改正する,
3)用語は標準用語として
学会が定め,解説を付けて「地盤工学標準用語集」とする」,というものであった。
作業工程に従っ愉地盤工学表記法検討委員会において,平成10、11年度にかけ
て,シソーラスの検討・改正作業が進められた。
　しかしながら,その間,「土質工学標準用語集」(標準用語集と呼ぶ)と「土質
工学用語辞典」(用語辞典と呼ぶ)の関係についての議論が生じた。すなわち,学
会にとって標準用語集と用語辞典の相違は自明であっても,一般の会員や読者から
すれば,両者の違いは不明瞭に見えるであろう。また,利用者の便宜という点から
も”当用漢字”にあたる標準用語ど国語(漢和)辞典”にあたる用語辞典が分
冊である現状は,不便であるといえる。さらに,最近の学問の進歩に照らして,両
者ともやや内容が古くなっていたり,記述,に誤りがある箇所が見ちれる等の課題も
浮上している。
　そこで,将来の改訂時には両者を統合し,「いわば“地盤工学用語辞
典および標準用語集”として出版するにとが望ましいと考えられる」というもので
ある。地盤工学表記法検討委員会では,統合に関する意見仁ついて用語辞典を所
管する事業部へ打診・調整を行い,3冊の用語をできるだけ統合する形で基準部に
おいて作業を進める旨の了解を得た。基準部会に統合方針を上申し統合の方針が承
認された(平成11年11月)。　
　それまで地盤工学表記法検討委員会で継続していたシソーラスの検討・改正作業
は,地盤工学全体を体系化する作業と同等であり,各委員の意見調整が困難であ
ったり,標準的によく用いられる用語が必ずしもシソーラスの上位語に相当するも
のとは限らない場合も多々あったこと等々から,作業は一時中断し辞典の進行に合
わせて進めていくことになった。結果的には,地盤工学用語の樹形図として付録に
まとめられている。
　実際に3冊の辞典を統合するとなると,その基本方針,内容,構成,執筆形態,
執筆要領,用語の選定,用語のデータペース化,著作権の問題等々,多くの課題
が存在する。そこで,本格的な改訂編集作業を始める前の準備段階として,平成
13年度に「地盤工学用語辞典(仮称)改訂編集準備委員会」が,地盤工学表記法検
討委員会のテーマ委員会として設立された。
　そこでの検討の結果,「地盤工学用語辞典」の改訂編集の基本方針として,
1)学会が出版する「辞典」ということを考慮し,普遍性と継続昨を重視する,
2)「土質工学用語辞典」をベース仁編集改訂を行う,
3)できるだけ多くの新しい技術,新分野の用語を取り入れる,
4)死語的,歴史的語等も含む,
5)標準用語には定義を付ける,
6)索引は,日英/英日のみとし,限られたページ数の中で本文を充実
させるということになった。
1)の基本方針は,これまでの地盤工学会の出版にお
いてはあまり重視されてこなかったように思われるけれども,学会として伝統的な
継続陛をもった書籍があってもよいと考えた末の結論である。
　保守的な編集方針を採用したといっても,掲載する用語の選定においては,地盤
工学会が出版している「土質工学標準用語集(1420語)」,「標準キーワプド(404
語)」,「岩の工学用語解説集(701語)」,「土質工学用語辞典(約4500 語)」,
「地盤工学ハンドブック(約2 600語)」を対象として一から見直した。また,「レキシ
コン」(Lexicon)も対象に加えた。用語の分類については,基本的に「土質工学用
語辞典」に準じることとしたが,比較的新しい分野である地盤防災,維持管理,地
盤環境などは,新たに追加した。選定した用語はすべてエクセルファイルに登録し,
執筆過程における用語の章間におけるやりとりや用語のもれなどの用語管理に活用
した。
これは,また,辞典のCD-ROM化に向けた作業の一環でもある。収集した
用語は, A, B, Cにランクをつけ分類された。「Aランク用語」は見出し語とな
る用語,「Bランク用語」は解説の中で用いられる用語,「Cランク用語」は解説に
使用するかどうかは執筆委員会の判断にゆだねられる用語である。準備委員会で取
りまとめた各ランクの用語数は,Aランク用語約1950, Bランク用語約3700, C
ランク用語約1750であり,検討の対象となった用語総数は約7400語にのばった。
　このような準備委員会の提言を踏まえて,「地盤工学用語辞典改訂編集委員会」
が平成14年7月から活動を開始した。準備委員会で概略検討された結果を確認・
修正しながら,平成14年12月には21の執筆委員会(章立ては23章)を立ち上げ,
本格的な改訂編集作業が始まった。執筆委員会委員の総勢は100人を超えている。
編集委員会との連携を密にするため,原則として編集委員会の委員が各執筆委員会
の委員を兼務した。執筆委員会では,新たな用語への対応,標準用語の定義の記
載,技術・研究の進歩により修正が必要な解説,基準・試験法の変更にともなう
改訂,SIへの対応,誤記等の訂正などについて検討のうえ執筆いただいた。
　執筆にあたっては,用語辞典のすべての解説について目を通し,必要なものにつ
いては変更を加えた。学会の書籍として,できるだけ継続性をもたせたいという趣
旨であるが,この点について批判があるとすれば,これはすべて委員長の責任であ
る。また,標準用語については,星印をつけてそれと分かるようにし読者の利便性
を高めた。標準用語の解説では,まず定義を記述することにしたが,必ずしもその
ようになっていない箇所も存在することをお断りしておきたい。
著作権ならびに編集権の問題については,編集権を優先した。
このことは,「土質工学用語辞典」の
編集のときと同様である。外国語索引については,国際的な情勢,索引の使用頻度,
辞典に占めるベージ数などを勘案し,残念ではあるが英語のみを対象とした。他の
外国語については,学会としても別途何らかの形で保有しておく手立てが必要であ
ろう。用語シソーラス化については,編集の最終段階において,地盤工学表記法検
討委員会から提案をいただいた。これを基に執筆委員会で検討した結果,意見がまとまったものについては付録に載せている。また,付録には最近のISO(国際標
準化機構)関係の動向についてまとめて載せている。
　改訂編集委員会のスケジュールは,平成14年度から出版まで3年間を予定した
が,おおむね予定通りに進んだのは,関係各方面のご協力に負うところが大きい。
また,委員会の運営事務,原稿の収集整理,出版作業の調整推進などでは,関係
各位には多大のご苦労をおかけした。心より深甚の謝意を表したい。

平成17年3月
地盤工学用語辞典改訂編集委員会
委員長　善　功企
目次
第1章　一般
第2章　地質と地形
第3章　土の物理・化学的性質
第4章　土の分類
第5章　浸透と地下水
第6章　土圧と支持力
第7章　土の圧縮と圧密
第8章　地盤材料のせん断
第9章　斜面安定
第1O章　地震と土の動的性質
第11章　岩の性質
第12章　地盤調査と計測
第13章　構造物の基礎
第14章　土留めと掘削
第15章　土工
第16章　路床と路盤
第18章　水利構造物(ダム,堤防および水路)
第19章　港湾と海岸の構造物
第20章　地盤改良
第21章　施工機械
第22章　地盤環境
第23章　地盤防災
付録
Ⅰ.単位・次元
Ⅱ.記号・用語
Ⅲ.地質年代表
Ⅳ.地盤材料の工学的分類方法に関する主要図表
Ⅴ.地盤工学用語の樹形図
Ⅵ.国際標準化に関する用語
索引
日本語・英語
英語・日本語



■約6,000語を収録し、日英/英日の索引付き
■付録にISO関係の用語も収録、解説