本書は、普段あまり目に付かない足もとの汚染、土壌・地下水汚染問題を知る入門書です。
　自分の足もとで何が起きているのかを知ること、これは大切なことです。多くの人々に土壌地下水汚染の現状を知ってもらい、汚染した土壌を浄化するにはどのようなことがなされ、今後は何をなすべきかを示し、入門者に研究の
方向を示すことを目的としています。
　第1章では、汚染の現状や、なぜこのような汚染が生じたかについて説明しています。汚染した地下水や土壌をそのままにしていたり、地下水や土壌が汚染していることを知らないで、地下水を飲むようなことがあった場合に生じる事象について説明しています。
　第2章では、神の恵みである地下水を世界や日本ではどの程度利用しているか、また、保全するための方法について示しています。
　第3章では、土壌・地下水汚染がどうして起きてしまったのか、土壌・地下水汚染の現状を示しています。
　第4章では、汚染物質が地中をどのように水平方向や鉛直方向に移動するかについて、それぞれの汚染物質ごとに説明しています。見えない地中に存在する汚染の現状を、地上からや調査用の穴(ボーリング穴等)を掘って科学的に調査する方法を第5章で示しています。
調査した結果の地下水や土壌を、室内でど
のような装置を用いて分析するかについても論述しています。
　第6章では、地下水の流れとともに地中を移動する汚染物質の挙動を、数学
的に予測する方法について記述しています。地中で汚染物質が時々刻々と動く
様をコンピュータグラフィックで表して説明すると、地下の見えない汚染の状況が
良く理解できます。
　第7章では、汚染された土壌や地下水をきれいにする方法について記述して
います。
　第8章では過去の土壌・地下水汚染を繰り返さないように何ができるかを示し
ています。先進国で生じた汚染を再びアジアの国々で生じさせないようにどのような活動がなされ、我々がこれから何をすべきかを説明しています。
　本書の姉妹書には、「地下水を知る」(2008年4月出版)「環境地盤工学入門」(1994年4月出版)「地盤工学入門」(2000年1月出版)等の地下水やそ
の汚染に関する書籍があります。また専門書としては、「土壌・地下水汚染の調査・予測・対策」(2002年出版)
「続・土壌・地下水汚染の調査・予測・対策」(2008年出版)があり詳しく学ぶことができます。


目次
第1章　はじめに
1.1　序
1.2　公害によって何が起こってきたか
1.3　なぜ、土壌・地下水汚染は生じたのか
1.4　廃棄物の処分と土壌・地下水汚染
1.5　土壌・地下水が汚染すると何が生じるのか
1.6　本書の構成
第2章　世界の地下水利用と法律
2.1　はじめに
2.2　世界の地下水利用
2.3　日本の地下水利用
2.4　海外の地下水利用に関する法制度
2.5　日本の地下水利用に関する法制度
第3章　土壌・地下水汚染の現状
3.1　はじめに
3.2　わが国の市街地土壌・地下水汚染の現状
3.3　わが国の農用地土壌汚染の現状
3.4　地下水環境基準の達成状況
3.5　土壌・地下水汚染の実例
第4章　土壌・地下水中の汚染物質の挙動
4.1　汚染物質の種類と分類
4.2　汚染物質の地層中での反応
4.3　汚染物質の特徴と土壌・地下水中での挙動

第5章　土壌・地下水汚染の調査法
5.1　汚染源を探す
5.2　汚染の広がりを調査する
5.3　環境リスク評価

第6章　汚染の挙動解析法
6.1　概説
6,2　土中の物質輸送
6.3　分散過程(機械的分散過程)
6.4　吸脱着
6.5　分解・生成
6.6　汚染物質毎の注意点
6.7　移流分散方程式の解法(解析的手法)
6.8　移流分散方程式の解法(数値シミュレーション)
6.9　汚染の挙動解析例
6.10　結果が一人歩きしないために
6.11　さらに詳しく学ぶために

第7章　土壌・地下水汚染の修復
7.1　はじめに
7.2　対策技術の概要
7.3　汚染を除去する技術
7.4　拡散を防止する技術
7.5　対策手法の選定
第8章　土壌・地下水汚染を防ぐには
8.1　化学物質の計測・分析
8.2　土呂久からアジアへ　アジアヒ素ネットワークの活動
8.3　有害物質の被害を防ぐには
　　　ーリスクのシナリオを管理方法-
8.4　アジアに対して何ができるか

付録　土壌環境基準、地下水環境基準