まえがき

　本書は、2010年11月に出版され好評の内に完売された関東地方の地盤の解説書の抜本的な改訂版である。本書は旧版に、地盤災害と電子地盤モデルの記述を加えるなど内容を抜本的に豊富にしたものである。
付録として現在自由に参照できる地盤調査の結果を地盤情報データベースとして集大成している。東京都の他関東地方すべての県(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨)のボーリングデータが収録されており、その量は旧版よりも7割増加している。
本書の一つで、関東地方の地盤の概況を知り、地盤のディジタルデータをコンピューター上で一括して容易に閲覧できる。データの閲覧の便利さも格段に改善されている。

　道路・鉄道・河川堤防・上下水道・電力施設・都市ガス施設・港湾・空港・農業施設などの社会基盤施設や個人住宅・集合住宅や建築構造物の計画と設計にはまず地盤の地質的・地盤工学的な概況を知る必要があり、可能であればこれまでに行った地盤の地質的・地盤工学的な概況を知る必要があり、可能であればこれまでに行った地盤調査の結果を参照することが必要である。事実、2011年東北地方太平洋沖地震おける仙台市等での宅造盛土の崩壊や浦安市等での地盤の液状化による住宅被害は地盤条件に基づいて耐震性の検討を行っていればその大部分は予見できたであろう。しかし、地盤調査は一般に非常に資金と機関が掛かるものである。その一方で、これまで行われた地盤調査の情報を得ることは容易ではない。

　本書は、社会基盤施設や住宅など建築構造物の計画・建設・維持管理・防災対策に携わる国や地方自治体の各機関や鉄道・道路・電力・都市ガス等の民間会社、設計コンサルタント、ゼネコン等建設会社などの技術者が計画・予備設計を行うための資料、高校・高専・大学の教育と研究のための資料として、非常に役に立つものである。また、個人的に購入して利用できるように低い価格に抑えている。

　本書は旧版出版後4年に亘る地盤工学会関東支部の活動に基づくものであり、非常に多くの委員の努力と国土交通省関東地方整備局、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構等各機関の御協力によるものである。ここに、厚くお礼を申し上げる。


2014年5月
公益社団法人地盤工学会　関東支部
関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会
委員長　　龍　岡　文　夫



―目　次―

第1章　はじめに
1.1　背景
1.2　社会基盤施設と建築構造物等の計画・設計・施工における地盤情報の重要性
1.3　地盤情報の公開の必要性
1.4　地盤解説書「関東の地盤」の出版方針

第2章　関東地方の地質・地盤
2.1　はじめに
2.2　地形・地質の概説
2.3　先新第三紀(基盤岩類)の地質
2.4　新　第三紀～第四紀の地質
2.5　自然災害
2.6　地盤沈下
2.7　おわりに

第3章　関東地域と県の地盤防災と地盤情報の活用
3.1　茨城県の地盤
3.2　栃木県の地盤
3.3　群馬県の地盤
3.4　埼玉県の地盤
3.5　千葉県の地盤
3.6　東京都の地盤
3.7　神奈川県の地盤
3.8　山梨県の地盤

付　録