【2012年5月31日 第1刷】
【2012年11月15日 訂正第2刷】
【2016年3月15日 訂正第3刷】
【2020年2月28日 第4刷】

■まえがき

昭和52年(1977年)に土質工学会基準「アースアンカーの設計・施工基準」(JSF規格:D1-77)が制定されて以来、今回が3回目の基準改訂で、およそ10年おきに改訂されていることになる。
定期的に改訂が実施されているようだが、振り返ってみると、それぞれの改訂時期には、グラウンドアンカー(以下、アンカーという)をとりまく技術的背景と評価が、基準を改訂すべき理由として存在した。

まず、最初の基準制定時においては、アンカーが欧州から導入されて10数年たち、適用の多様化に伴い、技術の信頼性を維持することが望まれていた。
最初の基準改訂は、昭和63年(1988年)11月で、「グラウンドアンカー設計・施工基準」(JSF規格:D1-88)　として制定された。この時の基準改訂において、防食と維持管理について新たに章立てされた。これには、アンカーの永久構造物への適用が拡大し、利用目的に対して適切に設計・施工し、さらに維持管理することが求められるようになったことが背景にあった。
2度目の改訂は、平成12年(2000年)3月で、「グラウンドアンカー設計・施工基準」(JGS4101-2000)として制定された。この時の改訂では、1988年の基準改訂後、多種多様なアンカー工法が開発されたことから、国内外のアンカー技術の進歩を反映させることが考慮された。さらに、前委員やアンカーの実務経験者の方々に対してアンケートを実施し、基準の問題点を明らかにするとともに、実務者の経験や実施例からの教訓が反映された。

アンカーは、技術導入されて50年以上が経過しており、その間にアンカーの長期耐久性の議論が高まったことについては、多くの実務経験者の中では周知されているところである。その結果、望ましい防食構造、管理段階での点検と維持管理の重要性等が示されるようになった。
さらに、国際的な情勢としては2000年以降、地盤構造物の試験規格が国際規格(ISO)として制定される動きがあり、その方向性を注視していく必要性が高まっている。今回の地盤工学会基準「グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説」(JGS4101-2012)では、このようなアンカーを取り巻く国内外の情勢を十分に考慮し、反映することに努めた。また、実務書として使い易くするために、構成を基準文、解説文、付録に三分割させた。本書が実務者の方々にとって役立つものになることを期待するところである。

■目次
第1章　総則
1.1　適用範囲
1.2　記録

第2章　用語・記号
2.1　用　語
2.2　記　号

第3章　計画・調査
3.1　一　般
3.2　計　画
3.3　調　査
3.4　記録の保存

第4章　材　料
4.1　一　般
4.2　グラウト
4.3　テンドン
4.4　定着具
4.5　その他の材料

第5章　防 　食
5.1　一般 般
5.2　防食用材料
5.3　防食方法

第6章　設　計
6.1　一 般
6.2　アンカーの配置
6.3　アンカーの長さ
6.4　アンカー体
6.5　アンカー頭部
6.6　アンカー力
6.7　定着時緊張力
6.8　構造物全体の安定
6.9　その他のアンカー

第7章　施　工
7.1　一　般
7.2　施工計画
7.3　施工および施工管理
7.4　材料の保管
7.5　削　孔
7.6　テンドンの組立加工
7.7　テンドンの取扱い
7.8　テンドンの挿入と保持
7.9　注入
7.10　養生
7.11　緊張定着
7.12　頭部処理
7.13　アンカーの除去
7.14　記録

第8章　試　験験
8.1　一般
8.2　試験の計画
8.3　基本調査試験
8.4　適性試験
8.5　確認試験
8.6　その他の試験

第9章　維持管理
9.1　一般
9.2　アンカーの点検
9.3　アンカーの健全性調査
9.4　対策
9.5　記録

【付録】
付録3
3-1　計画時に技術的検討が必要なアンカー
3-2　調査時に作成するアンカー体設置地盤情報
3-3　ルジオン試験
付録4
4-1　テンドンを構成する引張り材の例
付録5
5-1　腐食破壊の原理
5-2　腐食によるアンカー破断の実態調査結果
5-3　防食材料の仕様の例
5-4　合成樹脂(ポリエチレン)の試験方法と特性値例
5-5　水密性基準の例(NEXCO基準JHS122)
5-6　アンカーの防食構造
付録6
6-1　PTIにおけるアンカー傾角
6-2　アンカー体設置間隔とグループ効果の考え方(例)
6-3　アンカー体の土被りとアンカー体設置制限(例)
6-4　アンカーの極限引抜き力の推定
6-5　アンカーの極限周面摩擦抵抗
6-6　アンカー体長と極限引抜き力
6-7　テンドン自由長の考え方(例)
6-8　斜面安定に用いるアンカーの初期緊張力と定着時緊張力
6-9　土留め・山留めアンカーの初期緊張力と定着時緊張力
6-10　アンカーの除荷
6-11　アンカー定着時における緊張力低下の要因とその影響
6-12　連続繊維補強材を用いるアンカー
付録8
8-1　試験の計画
8-2　試験装置
8-3　基本調査試験
8-4　適性試験
8-5　確認試験
8-6　その他の確認試験
8-7　その他の試験
付録9
9-1　健全性調査の方法について
9-2　対策工の選定